森のようちえん全国交流フォーラム2015の報告会

今日は静岡市内にある森のようちえん「野外保育ゆたか」代表の京井麻由さんによる、森のようちえん全国交流フォーラム2015の報告会を、実際にお子さんを預けていらっゃる保護者の皆さんと一緒に聴きました。

 

yhyutaka.com


森のようちえん全国交流フォーラムin長崎・いさはや

http://forum2015.morinoyouchien.org

京井さんは、鳥取県と長野県で始まった認証制度に興味があり、「森のようちえんの社会化と行政の関わりについて」という分科会に参加されたとのことでした。

 

鳥取県では、数年前に智頭町で森のようちえんの運営費への助成が始まりました。そして平成27年度は、県が国の地方創生先行型交付金を活用し、県が1/2、利用定員に応じて園児一人あたり22,650円~27,370円(事業費は15,684千円)を助成する制度、「とっとり森・里山等自然保育認証制度」が始まりました。来年度以降も国の交付金がなくても実施するとのことです。金銭的な支援は全国でも鳥取県だけです。

 

とっとり森・里山等自然保育認証制度

http://www.pref.tottori.lg.jp/239563.htm

 

鳥取県では、森のようちえんの存在を理由に移住した人たちも出てきたので、特に人口の少ない鳥取県を動かしたのではないかということでした。

 

長野県では、「信州型自然保育認定制度」という、森のようちえんに限らず、信州の豊かな自然環境と多様な地域資源を活用した、屋外を中心とする様々な体験活動を積極的に取り入れる保育・幼児教育を行っている団体を対象に、認定制度が始まったそうです。認定園の研修交流会、指導者派遣、日本自然保育学会等との連携などの支援事業が計画されています。

 

信州型自然保育認定制度

https://www.pref.nagano.lg.jp/jisedai/kyoiku/kodomo/shisaku/shizenhoiku-ninteiseido.html

 

長野県で興味深いのは、担当者が保育でなく、次世代サポート課という青少年育成の部署であること。子どもの自己肯定感が低いことをたどっていくと幼児期に行き着き、この事業を始めたという経緯があるそうです。

 

参考として、国立青少年教育振興機構による「高校生の生活と意識に関する調査報告書」(H27.8)も紹介されていました。

http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/98/

 

今後の期待として、首都圏からの移住や地方創生の効果であったり、子育て本来の楽しさが実感できる保育が広がることで、一家族あたりの子どもの数が増えることが期待されているようです。

 

従来、森のようちえんの研究は、理論と実践が分かれていて、実践をしている人たちからすると、理論で語られていることに違和感があったようです。そういったこともあり、今月(11月)1日に、日本自然保育学会が設立されました。学問知と実践知の対話の可能性が探られることが期待されています。

 

日本自然保育学会facebookページ

https://www.facebook.com/shizenhoiku/

 

なぜ幼児期に体験活動が重要かという話もありました。新しい時代には「真に学んでいく力」が必要。単に知識や技能を増やすのではなく、知識、技能を活用して、自ら課題を発見し、その解決に向けて探求し、成果等を表現するために必要な思考力、判断力、表現力等の能力。主体性を持ち、多様な人々と協働しつつ学習する態度が求められるとされています。森のようちえんのように、自然の中で保育を行うことで、そういった力を得ることができると考えられているようです。

 

興味深いのは、森のようちえんについては、全国で動きがあるものの、行政のどの部署が担当するのかというのがバラバラで混沌としているようです。具体的には、保育、幼児教育、青少年育成、林業などです。

 

私も子どもに関わるいろいろな現場の方々のナマ声を聴かせていただいたのですが、正直なところ福祉、特に保育の絡みで森のようちえんを語ると、助成することの引き換えに、いろいろな制約がかかるような気がしています。林業の切り口は面白いというか、金銭的な話としては、たぶんいちばん自由な気がします。青少年育成というのは初めて知ったのでまだよくわかりませんが、意外と中間的で良いのかもしれません。

 

野外保育ゆたかとしては、普通の幼稚園でも野外保育の良さを取り入れてほしいと思っているし、野外保育についての社会的な情報発信していきたいので、認証制度があるならのっかりたい。ただ活動に制約がででくるなら、ちょっと考えますとのことでした。

 

実際にお子さんを預けている保護者の皆さんのナマ声は、次のような感じでした。

 

保護者が好きな大人の幼児期を振り返ると豊かな自然の中で育っていることがある。子どもにもそういうチャンスを与えたい。義務教育は小学生なので、その前までなら何があってもいいのではないか。

 

3年間実際に預けてみて、子どもが自ら挑戦したり、自然の中で生活する知恵を習得したり、子ども同士で話し合いをしている様子を知ると、子どもの成長を感じられ、野外保育ゆたかに通わせてよかったと思う。

 

研究や実証データが出たからといって、それで良し悪しを語ることはないとおもう。ただ、特に、第一子の場合には子育ての経験がないので、保護者の安心材料になるかもしれない。

 

意外と男性のほうがデータとかを気にして、女性は口コミや経験談から考えるのかもしれない。

 

字を書いたり計算を習ったりしないで小学校に上がるのは心配だった。※実際には、タープの下で本の読み聞かせもしていますし、野外の遊びばかりということはありません。念のため。

 

実証データは、祖父母を説得する材料になるかもしれない。祖父母から、小学校に入ってから座っていられるかなどといった心配の声を聞く。

 

人から聞かれた時に、森のようちえんの良さを言葉では言い表せない。体験してみないとわからないところもある。

 

子どもを幼稚園、保育園に預けるとき、親の利便性から、給食の有無、弁当持ちの回数、送迎の有無を重視してしまう。

 

などなど。

 

ここからは個人的な振り返りです。

 

通常の園舎のある保育園での預かりと、森のようちえんの預かりでは、本質的なところは異ならないと思います。どのように子どもを育てるかは、子どもとの対話などの接し方にあります。

実際に1日「野外保育ゆたか」さんが子どもたちと一緒に過ごしたときに感じたのは、京井さんが、子ども自身が考え行動するように対応していたことです。子ども同士で小さなケンカがあったときも、すぐに介入はせずに根気よく見守り、子ども同士の話し合いを待っていました。これは園舎内か野外とで違いはありません。

ただ、自然という場が持つ力を利用できるというのは、森のようちえんの強みだと思います。子どもたちが散歩ででかけた先の小川では、遊んでいても一定の緊張感を子どもたちがもっていたのに対して、ベースキャンプに戻ってきたら安心したのか、思いっきり走り回って遊んでいたのが印象に残っています。自ら状況を判断していたのです。

それと、字や計算を学ぶのは、意外とiPadなどのアプリでもできます。別に野外だけ、園舎内での教育だけのどちらかにしなければならないわけではありません。暗記だけなら、ICTを活用してタブレット端末などで子どもたちが自分で学ぶこともできたりする時代です。それは家に帰ってからでもできます。家ではできないこと。それを体験させる意味で、私は森のようちえんがとても良いと思っているし、選択肢として選べるのであれば嬉しいし、もっと皆さんに知ってほしいと思います。

 

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